Netflixの『捜索者の血』を見た。
先に感想を言ってしまうと、悪い話ではないんだけど、最高というほどではなかった。
つまらなくて途中で見るのをやめるような作品ではない。
息子を殺した罪で終身刑となった父親が、実は息子が生きているかもしれないと知り、刑務所を脱出して真相を追いかける。
設定だけを聞けば、かなり先が気になる。
実際、全8話を最後まで普通に見ることはできた。
ただ、見終わったあとに残ったのは、こんな感覚だった。
面白くなかったわけではない。
でも、そこまででもなかったな。
ここからは物語の結末や犯人について触れる。
よくある話だからこそ、役者の演技や存在感が大事になる
『捜索者の血』の物語には、どこかで見たことのある要素がかなり多い。
- 無実を訴える囚人
- 死んだと思われていた子供
- 刑務所を脱出して真相を追う父親
- 警察やFBIからの逃走
- 金と権力を持つ一族
- 協力者だと思っていた人物の裏切り
もちろん、よくある設定を使ってはいけないという話ではない。
犯罪ドラマやサスペンスなんて、材料だけを並べれば似たような作品はいくらでもある。
それでも面白い作品は面白い。
だからこそ、よくある話では役者の演技や存在感が重要になる。
同じような筋書きでも、人物に魅力があれば見え方は変わる。
父親の執念、母親の苦しみ、犯人の不気味さ。それぞれが強ければ、定番の物語でも作品として押し切ることができる。
『捜索者の血』にも、別に悪い役者はいなかった。
サム・ワーシントンが演じるデヴィッドは、息子を失い、妻とも離れ、刑務所に入れられても、息子が生きている可能性にすべてを懸ける。
父親としての必死さは伝わってきた。
ただ、物語全体を一段上まで持ち上げるほど強烈だったかというと、僕はそこまでではなかった。
消えた子供が家族に溶け込むの、早くないか?
僕が一番引っかかったのは、救出された息子のマシューだ。
マシューは3歳の頃に誘拐され、その後の約5年間を、別の名前と別の家族の中で育てられている。
救出された時点では、本当の父親や母親との生活をほとんど覚えていない。
本人からすれば、それまで父親だと思っていた人間が、実は自分を誘拐した犯人だった。
自分の名前も違う。
家族も違う。
それまで信じていた人生そのものが、全部ひっくり返される。
これは相当な話だ。
ところが終盤を見ていると、マシューは思ったよりも早く本当の家族の中へ溶け込んでいる。
僕はそこで思ってしまった。
消えた子供が家族に溶け込むの、早くないか?
もちろん、ドラマの最後で何年もかけた家族の再生まで描くことはできない。
事件を解決して、デヴィッドの無実を証明し、親子が再会するところで終わらせたいのも分かる。
ただ、マシューにとってデヴィッドは、突然現れて「僕が本当の父親だ」と言っている、ほとんど知らない男でもある。
助け出されたからといって、すぐに元の家族へ戻れるわけではない。
むしろ事件が終わったあとから、マシューにとって本当の苦しみが始まるはずだ。
それまで家族だと信じていた人への感情もある。
本当の両親に対して、すぐに愛情を持てるとも限らない。
自分が何者なのかという混乱も残る。
『捜索者の血』は、その一番重たい部分をかなりきれいに片付けてしまった。
マシューが簡単に馴染んだというより、作品が馴染むまでの面倒な過程を飛ばしたということなのだろう。
これは「どんでん返し」なのか?
終盤で、マシューを誘拐した犯人がヘイデンだったと判明する。
ヘイデンはレイチェルの元恋人で、デヴィッドたちの捜索にも協力していた人物だ。
演じているのはマイロ・ヴィンティミリア。
作品としては、協力者だったヘイデンが犯人だったことを大きな反転として見せている。
ただ、僕は見ながら、
どんでん返しというか……まあ、この人なんだろうな。
という感じだった(笑)。
物語の終盤まで残っていて、事件に深く関われる立場にあり、しかも妙に協力的な人物。
そう考えると、犯人候補はかなり絞られてしまう。
さらに、ヘイデンがマシューを誘拐した理由も、なかなか入り組んでいる。
デヴィッドの妻シェリルが、レイチェルの名前を使って不妊治療施設を利用していた。
その施設はヘイデンの一族と関係があった。
そしてヘイデンは、レイチェルが自分との子供を秘密で産んだと勘違いし、マシューを自分の息子だと思い込んだ。
その結果、別の子供の遺体をマシューに見せかけ、デヴィッドを殺人犯に仕立て、マシューを奪った。
真相を知って、
そうだったのか!
というより、
ずいぶん壮大な勘違いをしたな。
という気持ちのほうが強かった。
仕掛け自体は大きい。
ただ、その仕掛けを成立させるために、かなり多くの偶然と隠蔽を積み重ねている。
鮮やかなどんでん返しというより、終盤で一気に事情を説明して、強引に全体をつないだ印象も残った。
犯人を見て「『HEROES』のピーターじゃないか」となった
それでも、ヘイデンが登場したときから、僕はずっと別のことが気になっていた。
この人、『HEROES/ヒーローズ』のピーターじゃないか。
マイロ・ヴィンティミリアは、海外ドラマ『HEROES/ヒーローズ』でピーター・ペトレリを演じていた俳優だ。
『HEROES』を見ていたのは、もうかなり昔になる。
あの頃のピーターは若くて、危なっかしくて、それでも人を救おうとするヒーローだった。
そのピーターが、今では金と権力を持ち、静かな怖さを漂わせる犯人役を演じている。
懐かしかった。
そして、ずいぶん渋くなったなと思った。
若い頃の面影は残っている。
それでも、ただ年を取ったというより、顔や声に重さが出ていて、今回のような怪しい人物が似合う俳優になっていた。
正直に言えば、事件の真相よりも、昔見ていた俳優が年齢を重ね、渋い悪役になっていたことのほうが心に残った。
俳優が年を取ったということは、当然、それを見ている僕も同じだけ年を取っている。
『HEROES』のピーターを思い出しながら、そんなことに思いをはせてしまった。
悪くはない。でも最高というほどではない
『捜索者の血』は、決して見られない作品ではない。
続きは気になるし、展開も速い。
父親が生きている息子を捜すという中心部分も分かりやすい。
休日にまとめて見るNetflixのサスペンスドラマとしては、普通に成立している。
だから、何も面白くなかったと切り捨てるほどではない。
悪い話でもない。
ただ、傑作と呼ぶには、人物の心理も事件の仕掛けも少し浅かった。
特にマシューのその後は、もう少し描いてほしかった。
5年間を別の家族の子供として生きた人間が、実の家族に戻ればすべて解決するほど簡単ではない。
そこまで踏み込めば、ただの脱獄サスペンスではなく、もっと重たい家族の物語になったと思う。
結局、僕の感想はこれになる。
『捜索者の血』は悪い話ではない。
でも、最高というほどでもない。
そして一番心に残ったのは、事件のどんでん返しよりも、『HEROES』のピーターが渋い悪役になっていたことだった。
作品そのものより、俳優が歩いてきた年月に目が行ってしまう。
そういう見方をする年齢になったということなのかもしれない(笑)。
『捜索者の血』作品情報
- 作品名:捜索者の血
- 原題:I Will Find You
- 配信:Netflix
- 公開年:2026年
- 話数:全8話
- 主演:サム・ワーシントン
- 出演:ブリット・ロウワー、マイロ・ヴィンティミリアほか
- 原作:ハーラン・コーベン



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